Syrup16gアーティストレビュー


何て充実したステージだっただろう。10月10日。この日、都会の喧騒の中に佇み、数々の伝説を残してきた比谷野外音楽堂に新たな歴史が生まれた。孤高の異端児Syrup16g。

[delayeddead tour]計二時間半3アンコール。素晴らしいというか、驚愕の数字だ。そのうえ「気持ちよくなったから歌っちゃう」と仙台限定でやるつもりだったU2のカヴァーをやるというびっくりプレゼントつきだ。定かではないが25曲以上やったはずだ。

しまいには、「このライブいつになったら終わるんだ?」と思わせるほど彼等はずーっと演奏しているように思えたし、聞いているこっちも全く帰る雰囲気はなかった。そんな永遠のロック調和の中にいたのだ。 五十嵐は一曲が終わるたびに「ありがとう」とか「ありがとうございます」と言っていた。正直、Syrup16gがこんなに誠実なやつらだとは思わなかった。

「そんなに言わなくても気持ちは届いてるよ」と思わす言いたくなるほどだ。言葉からも今日は気持ちよく歌えてることがよくわかった。もうひとつ言わせて貰うと、Syrup16gがこんなにも音楽に対して真っ直ぐなバンドだったとも思わなかった。「明日なんか適当さ 安心感なんか敵だろ?」とか「いまさら何もする気ねえ 生きてるなんて感じねえぜ 」とか「夢はかなえるもの 人は信じあうもの 愛はすばらしいもの もういいって もういいって」とか投げやりでぼやきのような歌詞ばっかりなのに。

でも一つの曲に仕上がった時にゾクゾクするようなロックサウンドが圧倒的な迫力を生み、歌詞に魔力を持たせる。痛々しいくらい不器用な彼らの生身の音は怖いくらい切なくて、苦しくて、激しくて、綺麗だった。そんな神聖な空気を生むステージはいいリズムで進んでいった。 激情と静情が交互に織り成す圧巻の勢いの中に、今、音楽ができることへの喜びと曲に対する優しさを感じた。暖かさを感じたのだ。五十嵐は陰影と湿気のある声でときには激しくエレキギターを掻きむしり、唸り声を上げ歌い上げ、ときには椅子に座りアコースティックギターを優しく鳴らし、情緒的に歌い上げた。

そこにはある種の温度が生まれていて、寒さが加速して来たこの時期の肌にはすぐに感じることができた。「寒くない?」と気にかける五十嵐だが「少し寒いけど暖かい温度をもらえるから平気なんだ」とその場にいた誰もが思ったことだろう。そう、熱のあるロックの至上の感覚を、全身で受けとめたんだから。 クオリティーの高さはいつもながら有無を言わせぬほど上等であるが、それ以上に彼等の持つ不思議なオーラにすぐに引き込まれてしまった。

いや、多分本当は会場にいた客も含めたシロップのライブ独特の空気に引き込まれてのかもしれない。ロックバンドならある程度の暴れがあってもおかしくないと思ったのだが、聞きに来ている人のほとんどが自分で勝手にリズムをとりステージを眺めている。拳を上げることも一緒に歌うこともほとんどない。まあ、シロップの曲ほど暴れずらいものはないのだが。

勝手な見解だけど、シロップを聞きにくるお客は、聞けば聞くほど体に染み入るメロディーと五十嵐の描く詞の世界にいつの間にかどっぷりと頭までつかっていて、気づいたらもう抜けだせないで、シロップの曲がなければやっていけなくなる、そんな中毒者も多いはずだ。まるでクモの巣ように、一度はまってしまったら逃れることはできない。

ニコチン切れのヘビースモーカーみたいに、体の中でSyrup濃度が低下するとたまらなく聞きたくなるのだ。私もその一人、重い中毒者であることは断言できる。 もうひとつ感じたことは、Syrupには日暮れがよく似合うことだ。日が沈む綺麗な夕日じゃなくて、もうすぐ世界が真っ暗になる一歩手前の不安定な時間。薄暗くて、あんまり前が見えなくて、グレー色の風景が広がる世界だ。そんな闇に近づく時にスモークとライトで飾られたシロップは不気味なほど威光を放っていた。

「俺らのライブ晴れたことないんだよ」と五十嵐が言っていた。彼らに爽やかな明るい空は似合わないと空も知っていたのかもしれない。2度目のアンコールが終わって、「これで終了かな?」っていうあきらめの感情を少し抱きつつも、3NDアンコールの手をたたき続けていた時、中畑がステージに戻ってきた。そして地鳴りのするよーなドラムパホーマンスが、突如始まったのだ。その後に登場したキタダのベースが胴鳴りをあげ、そして最後に出てきた五十嵐のギターが叫号した。これは演出なのか、はたまた予期していたことかは分からないがこの後の展開を期待せずにはいられなかった。

こうして歴史に名を残す三度目のアンコールが始まったのである。 最後のアンコールに答えたあと、五十嵐はこう言った。「今日は来てくれて本当にありがとうございます。台風とかもあってすっげー心配してたんだけど、あっ、お客さんが来るかもすっげー心配してたんだけど。俺らは解散とかもする気はないんで、これからも好きなように音楽はずっと続けていくんで、みなさんも、もしよかったらついてきてください」そんな言葉に会場は拍手で答えた。

シロップはこの野音以降の活動予定は未定である。決めていないのか、決まっていないのか?彼等に取ってはお節介なだけだが、私はシロップがどうなるのか心配をしていた。でもこの言葉を聞いて、本当に余計な心配をしていることに気づかされた。

Syrup16gは自分のペースでこれからも音を鳴らしていく。誰のためでもなく自分達のために。そんな彼等のことだから追いかければ追いかけるほど逃げてしまうんじゃないんだろうか?そんなことはせずに、すこし少しほっとこうと思う。見守るったって見ちゃたぶん嫌がるし、こんなバンドを忘れることもできないしねえ。ほっとくのが一番いい。だってほっといたっていつか聞こえてくるから。シロップの音はどんなに遠くたってちゃんととどくから。

>〜written by 音楽ライターキムラトモミ 〜 ・原稿依頼は→メール(キムラトモミ)
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