「AISIAN KANG-FU GENERATIONの存在と証明 」※アーティストレビュー


ASIKANを求めた時代

時代は上質な日本語を綴るロックバンドを探していた。だからといって今決して上質な日本語ロックバンドがいないわけじゃない。奥田民生とか最近解散したTHE YELLOW MONKEYとかだって素晴らしく鋭い感性で独自の世界を切り開いてきたそりゃあもう質の高いアーティスト達だ。じゃあなんでアジカンが求められたのか?時代は新鮮な青臭さが欲しかったのかもしれない。青くささを持っている それは音楽の経歴が物語るもので若いバンドにしか持たない言ってしまえば未熟さである。その未完成で自分たちの真の姿を模索している頃には独特の勢いがある。もがいて、あがいて、認められたいと思う気持ちが曲に染みついている。でも青くささ--なら若いロックバンドなら皆持っているものだが上質な日本語ロックを操るバンドはそういない。ましてロックを柱としているバンドの中になんて。

 皆、無意識のうちにこれからの王道日本語ロックの後継者を探していたんだろう。だから青くさい色を持ちながら根底には揺るがないロック本質がドーンと横たわっているアジカンが選ばれたのだ。


[今のASIAN KANG-FU GENERATIONが放つ存在証明「ソルファ」]

 メンバーの音の連鎖反応によってここにダイナミズムの融合が生まれた。しかもそのダイナミズムは真ん中に図太い芯がある。これからのアジカンのバンドとしての覚悟を感じることができたアルバム。まだまだこのバンドは上に行ける。王道を登っていける。だんだん真の姿を表してきて真っ直ぐでソリッドなロックを鳴らし始めた。「ソルファ」には前回のアルバムにないものがあるからだ。それはバンドの繋がりが深くなったことだ。音が一つ一つ主張しながらも信頼という一つの枠からはみ出すことなく鳴っている。ミディアムテンポが大半を占める今回のアルバムは自己表現よりは聞かせる事を意識している。「君繋」の時は自己表現で精一杯だった彼等。バンドとしての機能がフル回転しているようでとてもストイックだ。

この一年でアジカンどう変化したのだろう?アジカンの名を知らしめたメジャーファーストアルバム「君繋ファイブエム」から一年。「サイレン」「ループループ」「リライト」「君の街まで」に至るまで彼等の創る楽曲にどんな変化があったのか。リリースされたシングル4曲から分かるアジカンの精神状態は実に様々であったことが歌詞から読み取れてしまう。 「サイレン」千年先は思い描けないけど一寸先を刻むことで始まる僅かな願い---確実に一歩ずつ歩みを進めようとしているメジャーでの確かな思いを感じさせた。でも息ぐるしさ、もどかしさがある、何か迷いのようなそんな後味を残した。「ループループ」僕が描いたその影でその未来は霞んでしまった?---答えを見つけることができない状態が続いているのだろう。はっきりしない濁った後味はまだ消えそうにない。

「リライト」軋んだ思いを吐き出したいのは 存在の証明が他にないから掴んだはずの僕の未来は尊厳と自由で矛盾してるよ --君を成す言動力 全身全霊をくれよ---リライトのこの言葉からわかる葛藤。彼等は日本を揺るがすまでにデカくなったし、自分の音楽ができる環境は良くなったはすだ。しかし成功と比例してのしかかる周りの期待でいつのまにか自分達では手に負えないくらい大きくなった重圧。そんな新たに生まれた苦みを吐き出している。まだ解決策は見つかっていないようで、混沌とした迷い森で姿の見えない闇に追われている必死さが伝わってくる。そして吹っ切れたような、呪縛が解けたような曲「君の街まで」

 ロックバンドASIAN KANG−FU GENERATIONだと思っていたが「君の街まで」はロックというかポップだ。「え?もしかして方向転換しちゃったの?」なんて思ったりしたし、ヘビーなサウンドを期待していた私は少し物足りなさを感じていた。一体どうして彼らはこの曲を世に放ったのか?ロックバンドを頑なに守りたいならアルバムの中の一曲として、悪く言えば隠してしまえばいいはずだ。そうすればポップ色をもつ曲があっても「まあ、こういう曲も作るんだね。」で終わるし、おかしくない。

しかし彼らはこの楽曲をシングルとして惜しむことなく表にだした。かなりの勇気がいることをやったはずだ。「君の町まで」はアジカンの曲の中では肩の力が抜けている方で、激しい衝動とか息苦しいもどかしさとかは感じられない。でもミドルテンポとメロディアスな旋律の上に冷静なまなざしの客観的な冷たさを感じる。その奥には現在地を図ろうとするしたたかな姿勢がうかがえる。この一年のめまぐるしい環境の変化--メジャーデビューから階段を3段抜かしで駆け上がってきた彼ら位置を確認したかったのだ。早何度もこの曲を聴いているうちにわかることがあった。

「君の街まで」にはアジカンの根っこを支えるロックがちゃんとそこに存在していること。何度聞いても感じる新鮮な空気の持つ中毒性。ギター、ベース、ドラムの心地よい絡みから感じるバンドの一体性の進化。なによりメジャーデビューシングルの「未来の欠片」で---些細な言葉や何気ない仕草結ぶ思いをただ確かめたい僕の歌---が「君の街まで」で---鏡みたいに写る僕らの心細さも全部抱えて君の街まで飛ぶための歌---になっている。明らかに外を向きはじめたのだ。

アジカンの楽曲によく使われるの「存在証明」という言葉。4つの楽曲から見ても自分たちが音を鳴らす理由を求めていることが分かる。リライトまではかなり混沌とした状態の中にあった彼らは「君の街まで」で存在証明への活路を見出した。

[「ソルファ」の覚悟] 「海岸通り」はソルファを象徴する曲はだと感じた。---あれがないこれがないどんな希望も叶えたい欲張りそんな僕らの足りないものだけそっと包むように---でアジカン内部構造を垣間見ながらその現状を乗り越える術を見つけたように感じるし。---すれ違うこともはみ出すことも恐れていないよ どこにいたってただ願っている---ことでアジカンは立ち止まっていないこともわかる。だってもう怖がるものなんてないじゃないか。未来は誰にだってわからないし、わかったらつまらない。この一年足を止めることなく走り続けた彼等はこれからも止まることはないだろう。自分達で速度を調節しながら、周りのささいな日常を感じながら、アジカンの進化確認しながら走っていくだろう。存在は証明済みだ。

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〜written by 音楽ライターキムラトモミ 〜 ・原稿依頼は→メール(キムラトモミ)



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