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歌を歌うトランペッターは数多くいるが、その中でもチェット・ベーカーは別格の存在だ。明るく女性的な歌声は、ルイ・アームストロングとは正反対で、それが彼の魅力であった。このアルバムに収録されている20曲は1953年から56年にかけてのものだが、彼のベスト盤といえる。 一つには、そのトランペットがすばらしく、多重録音しているものある。もう一つは、選曲だ。多くのジャズシンガーとは違い、ベーカーはオリジナルの通りに歌い、即興を楽しむのはトランペットにしていた。ラス・フリーマンのハイレベルなピアノのおかげで、どの作品にもリズムが生きている。どの曲も、ベーカーがジェリー・マリガン・カルテットとともにジャズ界に大きな影響を与えていたころのもので、そのボーカルは何年にも渡って熱狂的な支持を受けている。様々なリイシュー盤が出ており、編集方法によっては、ビル・パーキンス、ジミー・ジュフリー、ジョー・パスらの演奏がボーカルよりも目だっている曲も多かった。だがこのアルバムは、オリジナルの演奏が生きており、聴くに十分値する。Steve Voce

買いです。
８９年あたりに、チェットの死後公開された、写真家ブルース・ウェヴァーによるドキュメンタリー映画のサントラという体裁をとっていますが、実質的に最後のスタジオ・アルバムといえる作品です。どうしてもＬＤで何度も見た映画の印象に引っ張られてしまい、また世間的にも退廃的で、自滅的な生き方ばかりが象徴される嫌いもありますが、ここには、紛れも無く５０年代にピークを迎えたジャズという音楽のかつて有していた輝きが、確かにあります。

中性的なチェットの魅力全開！
美しいピアノの音にのってチェットの不思議なボーカルが心に染み渡ります。ひたすらぼーっとしながら曲に身を任せてみましょう。なんともいえないリラグゼーションの世界に浸れます。

チェットの最高傑作
チェットは、楽譜の読めない天才トランぺッター、ウエストコースト・ジャズの寵児など様々に言われるけれど、若くして天才の名をほしいままにしたせいか、酒とドラッグに溺れて刑務所とシャバを往き来した挙句、このアルバムを最後にアムステルダムのホテルから身投げして自殺してしまった、悲劇のJAZZミュージシャンのひとりだと聞く。そのためか、アルバム全体に漂う悲壮感はただならぬものがある。けれど、彼がその生涯で手に入れた成功と失望の狭間で垣間みた人間模様は珠玉のインプロに昇華され、時代精神をさえ掬い取って見事と言う他ない。特にZingaroは、ギター、フルート、ウッドベース、ピアノといずれをとっても妙演で、これほどしたたかでスリリング、しかも切れのあるインプロの共演（響演）はまたとないのではないかと思う。決してチェットを崇拝するのではないが、昨今の“セレブ”志向の風潮を思うとき、成功もどん底も経験したひとりのアーティストの死を間際にした“独白”は一聴の価値があると思う。

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